未成年の喫煙表現がありますが助長するものではありません
ご理解ください

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「クソが」
内心に思っていた事を負い目を感じる事も無く素直に言葉に出した。
屋上にただ一人居座りながら気持ちをぶちまけたって誰も聞いてる人はいない、聞いていたとしても仁王が言ったところで何の不思議には思わないだろう。
そう自分が言ったところでイメージとしては、あぁ仁王が何かにイラついて不満を言ってるという感じにとられるのも仁王はどことなく分かっていた、全国に行ったテニス部員だとしても見た目からして真面目に取られない事等、百も承知だ。
普段からこのような感情を表だって声に出さない自分が我慢も出来ずに悪態をつくなんてだが我慢など出来る筈も無かった

「クソが」

同じ言葉を吐くのをやめる気にもなれない、このイライラを吐き出したいがこの言葉以外の語彙もどう考えても自分からは出てこない、自分の知識の無さにもイライラしながらも豊富な知識があるであろう人物を思い出してしまって顔を歪めた。
そうだ、自分とあいつは相容れないなど分かっていた事、出会った瞬間言葉も合わせていないが嫌悪感が自分を包み、そして相手もきっと自分と同じ不の感情を自分に持っているだろうとひしひしと感じる事が出来た。
どうせ誰も来ない屋上だ、しかも今は授業中ここで悪行をしようとばれる事はまぁないだろうと注意を払い仁王は制服のポケットから少し形の崩れたタバコを取り出して火を付けた。
所謂喫煙、スポーツをする未成年に良くないのも分かっているがこのイライラとした気持ちをまき散らす方法はこれ以外知らないのだからしょうがないと誰に言われるでもなく逃げ道という口実を考えていた。
吐き出されぷかぷかと消えていく煙を見ながら仁王は考える

「煙になりたいのぅ」

「貴方人間じゃないですか馬鹿なんですか」

「……いつ来たんよ」

開口一番にバカ呼ばわりとはお前は何さまだ、あぁ学校では紳士と名高い優等生様ですね。俺のこの情緒的な感情でさえも無くす為に一々授業を抜け出して来たと言うのか御苦労な事で

「校舎から煙見えないと思いで?貴方のその身勝手な行動でテニス部が大会出場停止になったら責任とれるんですか」

あぁ、そういう説教か、まぁそりゃそうだろうと仁王は煙草を消す気配も無くもう一服と煙草に口を付け煙を吸い込んだ時に頭上から舌打ちが聞こえたのは無視する事にした

「うっさいヴォケ、オカンか眼鏡」

「だから嫌なんですよ貴方みたいな人は」
嫌味を言いつつ眼鏡を直しながら説教をかますダブルスパートナーの『柳生』貴方みたいな人?素直に貴方が嫌いと言えば良いだろうにめんどくさいやつだ。あぁめんどくさい!だから嫌いなのだ、全てが嫌悪に変わってくる。
テニスだったら息が合うとまでは行かないがスムーズに試合が流れるように進むのにこうもテニス以外が合わない

「あぁーはいはい悪ぅござんした、優等生様の考え付かないような奇行をして、だからはよ消えろや」

早く目の前から消えてくれないか、ただでさえ苛立っているのにその元凶が近くにいるとなると……

「居なくなったらまた悪さするんでしょう貴方の態度がテニス部の品位を落とすんですよ」

この紳士様の態度を品行方正だと信じて疑わない全校生徒の前で晒してやりたいのぅ……

「はぁ、で、何言いたいんよ、やめろってか?」

「頭悪いんですね、これだから……」

先の見えない会話にいらいらしながら柳生は俺のまだ半分も吸い終わっていない煙草を奪い去りその煙草を咽ることなく吸い込んだ

(!!コイツ、慣れてる――)

「見えないところで吸えって言ってるんですよ、貴方も人間なら頭くらいつかったらどうです」

人を見下すように俺の煙草を投げ捨てる優等生にいらつきがまた増して去る背中を見つつ屋上に落ちた煙草の煙がゆらゆらと青空に消えた




「クソが――」
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