部活が終わり、鍵当番の柳生が職員室に行っている間に俺は校門の近くに移動しておく
空を見れば数々の星が煌めいているのがわかる。
夢中で球を追いかけているときには気付かないが、時間はあっという間にすぎるのだと空の色を見て実感する
春がもう少しそこまで来ているが、まだこの時期は肌寒く寒さが苦手な仁王にとっては肌寒いというレベルではない、汗もかいているため寒いと言った方が正しいのだが、先に帰る事などしない、いつだって仁王は柳生を待つ
勿論逆もまたしかり、柳生もこういう時には仁王を待っている
それは二人の約束ではなくいつの間にか自然にそういう風になっていた
「さっむ……」
誰かに伝えるようにではなく、独り言をポツリと呟く
校門近くの壁に背を付き自分のダブルパートナーを待つ
その間に携帯を見ると何故か柳生からの新着メールが1件内容は先生に用事を頼まれたので少し遅れます。
といったような内容だった、確かに柳生は見た目からして優等生、成績も上位なので、そりゃ先生からの頼みを断るわけが無い。
「さっすが紳士様じゃのぅ」
自分と柳生はあわない、そう思ったのは1年の時にテニス部で自己紹介をした時だ、きっと今の立海レギュラーで誰よりも自分とは違うとそうその時に思ったのだ。
おそらく柳生も自分を見てそう思ったに違いない、瞳の見えない眼鏡からそういうオーラを出しているように感じたなのに今はどうだ?
公式戦負けなしのダブルスとまできたものだ、ダブルスとして一緒に居てわかってきたものがある、あの第一印象は『間違ってはいなかった』あわないのではなく、俺と柳生は一緒なのだと、合うという表現では無い。
柳生と俺は一緒過ぎたのだ、同類と呼ぶのも何かが違う、それをただ数分とも言える自己紹介で互いに感じとってしまった。
第一印象で感じたのは一緒過ぎた故の反発だったのだと数年一緒に過ごしてきてわかった
メール画面を開きっぱなしだったのを閉じて、携帯をポッケに突っ込む、返信等はしない。
時間がかかろうが柳生は『待っている』と知っている、それは俺が逆の立場でもきっと『待っている』からだ
信頼と言えば聞こえはいいがこの関係はそんなもんでは無い気がする。
昔の事を考えて居たらかなりの時間が過ぎていたらしい、人の気配に横を見ればニコニコと笑顔を浮かべる半身のような自分のダブルスパートナーが立っていた。
「声かけぇ」
「かけましたよ、遅れてすいませんと。」
考え事して気付かなかっただけでしょう?と紳士ぶるが嘘だ。
「アホな事言うんじゃなか、声なんかかけとりゃーせんじゃろお前、俺が考え事してると思ってそんな嘘ホイホイ付きよって……」
「嘘なんて貴方の専売特許でしょうに」
「だから言うとるんじゃ、詐欺師舐めたらいかんぜよ」
「まぁ貴方のペテンなんてもうわかりますけどね」
いいように言わせておけば目の前の紳士は無言で手を差し出してきたその手を振り払うなんて事は無い
夜道が好きだ
二人手を繋いでも、わかりにくいから
いつもの事なので手をとる
「冷たいですね」
気温の事ではなく、今手を繋いでいる体温の事を言われている
「誰かさんが待たしたからのぅ?」
「温めてさしあげているでしょう?足りませんか?」
公園の横を横切る時にベンチが視界に入った瞬間に言葉が先に出た
「ベンチ座らん?」
チラリと2cm高いやつを、姿勢の関係で2cm以上の差があるが……
柳生を見ればただ微笑んでいるこれは言葉に出さずとも肯定だ
手を繋いだまま公園のベンチに座る、気温のせいだが布越しにベンチの冷たさが伝わってきた
遠くから見れば中学生が二人ベンチに座っているだけにしか見えない。まして付き合っているなんて想像も出来ないだろう。
やぁーぎゅ
心で名を呼ぶ、柳生の声で、あの唇が仁王君と言ってくれるのが好きだ。
誰でもなく、柳生が俺を呼んでいる、それは試合中でも、実生活でも、名前を呼んでくれるだけで幸せになれる
やぎゅう
「仁王君」
もっと呼びんしゃい
「仁王君、星が綺麗ですよ」
「そこは月じゃないんか……?文学的な柳生君らしくないんじゃなか?」
「言って欲しいんですか?」
額をつけてクスリと笑い合う、俺達にそんなのは似合わない。二人で感じとった事
街灯の下くだらない事で笑い合う
至近距離で目が合えば、することは一つ、紳士らしくいいですか?なんて了承はいらない
二人の距離が0になる時、この高揚する感覚と交り合う吐息。
浅いただの口づけから深くお互いをあさるかのように、舌を合わすくちゅくちゅと、手を繋いでいない方の手を互いの頬から首筋に這わせ、もっと近づくように二人で力を入れる
顔の向きをかえながら、確かめるようにヌルヌルとする唾液を交えながら
外に居る感覚が麻痺しているんじゃないかと言うくらい没頭しくぐもった息が吐かれ少し唇を離すが
気持ちいい、もっととねだる様にかぷりと相手に優しくかみつく、するたびに相手も答えるように優しく、時に激しく
唇を離すと糸を引く液がブツリと切れた、それと同時に現実に返ってくる
ただいま現実
明日も朝から部活の為に、そろそろ帰らなくてはならない、自宅へ
「柳生、帰らんと」
また額を付けながらいう
「えぇ、わかってます」
と言って、ベンチから立たない柳生を不思議に思って少し考える
あぁわかっとうよ
「やーぎゅ」
名前を呼んで欲しいんじゃろ?
「やぎゅう、柳生、」
好いとうよ、柳生
言い終われば満足したのか額をパッと離して、立ちあがる勿論手を繋いだまま
公園の出入り口まで歩いて行くと急に繋いでいた手に力が込められた
「仁王君、星が――」
言い始めると同時に唇を奪ってやる
さっきのように深いものではなく浅く
なぁ俺の半身
欲しい言葉をくれる愛しい半身
「帰るんじゃろ?」
二人の頭上には人工的な光は無く、星空が降り注ぐ。
俺達は似ている、だけれど物事も見る時に二人で一つの事しか考える訳ではない、結果同じ答えに行きつこうとも。過程が違うのだ。
俺達は出会うべくして出会い、このような関係になったきっと。
「柳生」
そうじゃろ?
煌めく星たちが柳生のためにあるようだと錯覚しそうになる、品行方正な紳士に。
こんな紳士がある意味学校での問題児な俺と付き合っているなんて知れたらどうなるだろうか
バラすなんて勿体ない事などする筈が無いのだが。
「悪戯が過ぎますよ」
と釘を刺される
「俺だけの紳士じゃーとかな」
「別の意味で貴方だけの紳士じゃないですか私」
「勝手に言っとれ!」
と公園の近くでたまに口づけをする事なんて、俺達が知っていればいい。
これが過去になっても二人で隣同士で笑顔で語り合えれば
俺と柳生は似ている、離れることなど出来ない程に、その事を知っているのは俺達とこの星空だけ
今日も星が綺麗だ
END
空を見れば数々の星が煌めいているのがわかる。
夢中で球を追いかけているときには気付かないが、時間はあっという間にすぎるのだと空の色を見て実感する
春がもう少しそこまで来ているが、まだこの時期は肌寒く寒さが苦手な仁王にとっては肌寒いというレベルではない、汗もかいているため寒いと言った方が正しいのだが、先に帰る事などしない、いつだって仁王は柳生を待つ
勿論逆もまたしかり、柳生もこういう時には仁王を待っている
それは二人の約束ではなくいつの間にか自然にそういう風になっていた
「さっむ……」
誰かに伝えるようにではなく、独り言をポツリと呟く
校門近くの壁に背を付き自分のダブルパートナーを待つ
その間に携帯を見ると何故か柳生からの新着メールが1件内容は先生に用事を頼まれたので少し遅れます。
といったような内容だった、確かに柳生は見た目からして優等生、成績も上位なので、そりゃ先生からの頼みを断るわけが無い。
「さっすが紳士様じゃのぅ」
自分と柳生はあわない、そう思ったのは1年の時にテニス部で自己紹介をした時だ、きっと今の立海レギュラーで誰よりも自分とは違うとそうその時に思ったのだ。
おそらく柳生も自分を見てそう思ったに違いない、瞳の見えない眼鏡からそういうオーラを出しているように感じたなのに今はどうだ?
公式戦負けなしのダブルスとまできたものだ、ダブルスとして一緒に居てわかってきたものがある、あの第一印象は『間違ってはいなかった』あわないのではなく、俺と柳生は一緒なのだと、合うという表現では無い。
柳生と俺は一緒過ぎたのだ、同類と呼ぶのも何かが違う、それをただ数分とも言える自己紹介で互いに感じとってしまった。
第一印象で感じたのは一緒過ぎた故の反発だったのだと数年一緒に過ごしてきてわかった
メール画面を開きっぱなしだったのを閉じて、携帯をポッケに突っ込む、返信等はしない。
時間がかかろうが柳生は『待っている』と知っている、それは俺が逆の立場でもきっと『待っている』からだ
信頼と言えば聞こえはいいがこの関係はそんなもんでは無い気がする。
昔の事を考えて居たらかなりの時間が過ぎていたらしい、人の気配に横を見ればニコニコと笑顔を浮かべる半身のような自分のダブルスパートナーが立っていた。
「声かけぇ」
「かけましたよ、遅れてすいませんと。」
考え事して気付かなかっただけでしょう?と紳士ぶるが嘘だ。
「アホな事言うんじゃなか、声なんかかけとりゃーせんじゃろお前、俺が考え事してると思ってそんな嘘ホイホイ付きよって……」
「嘘なんて貴方の専売特許でしょうに」
「だから言うとるんじゃ、詐欺師舐めたらいかんぜよ」
「まぁ貴方のペテンなんてもうわかりますけどね」
いいように言わせておけば目の前の紳士は無言で手を差し出してきたその手を振り払うなんて事は無い
夜道が好きだ
二人手を繋いでも、わかりにくいから
いつもの事なので手をとる
「冷たいですね」
気温の事ではなく、今手を繋いでいる体温の事を言われている
「誰かさんが待たしたからのぅ?」
「温めてさしあげているでしょう?足りませんか?」
公園の横を横切る時にベンチが視界に入った瞬間に言葉が先に出た
「ベンチ座らん?」
チラリと2cm高いやつを、姿勢の関係で2cm以上の差があるが……
柳生を見ればただ微笑んでいるこれは言葉に出さずとも肯定だ
手を繋いだまま公園のベンチに座る、気温のせいだが布越しにベンチの冷たさが伝わってきた
遠くから見れば中学生が二人ベンチに座っているだけにしか見えない。まして付き合っているなんて想像も出来ないだろう。
やぁーぎゅ
心で名を呼ぶ、柳生の声で、あの唇が仁王君と言ってくれるのが好きだ。
誰でもなく、柳生が俺を呼んでいる、それは試合中でも、実生活でも、名前を呼んでくれるだけで幸せになれる
やぎゅう
「仁王君」
もっと呼びんしゃい
「仁王君、星が綺麗ですよ」
「そこは月じゃないんか……?文学的な柳生君らしくないんじゃなか?」
「言って欲しいんですか?」
額をつけてクスリと笑い合う、俺達にそんなのは似合わない。二人で感じとった事
街灯の下くだらない事で笑い合う
至近距離で目が合えば、することは一つ、紳士らしくいいですか?なんて了承はいらない
二人の距離が0になる時、この高揚する感覚と交り合う吐息。
浅いただの口づけから深くお互いをあさるかのように、舌を合わすくちゅくちゅと、手を繋いでいない方の手を互いの頬から首筋に這わせ、もっと近づくように二人で力を入れる
顔の向きをかえながら、確かめるようにヌルヌルとする唾液を交えながら
外に居る感覚が麻痺しているんじゃないかと言うくらい没頭しくぐもった息が吐かれ少し唇を離すが
気持ちいい、もっととねだる様にかぷりと相手に優しくかみつく、するたびに相手も答えるように優しく、時に激しく
唇を離すと糸を引く液がブツリと切れた、それと同時に現実に返ってくる
ただいま現実
明日も朝から部活の為に、そろそろ帰らなくてはならない、自宅へ
「柳生、帰らんと」
また額を付けながらいう
「えぇ、わかってます」
と言って、ベンチから立たない柳生を不思議に思って少し考える
あぁわかっとうよ
「やーぎゅ」
名前を呼んで欲しいんじゃろ?
「やぎゅう、柳生、」
好いとうよ、柳生
言い終われば満足したのか額をパッと離して、立ちあがる勿論手を繋いだまま
公園の出入り口まで歩いて行くと急に繋いでいた手に力が込められた
「仁王君、星が――」
言い始めると同時に唇を奪ってやる
さっきのように深いものではなく浅く
なぁ俺の半身
欲しい言葉をくれる愛しい半身
「帰るんじゃろ?」
二人の頭上には人工的な光は無く、星空が降り注ぐ。
俺達は似ている、だけれど物事も見る時に二人で一つの事しか考える訳ではない、結果同じ答えに行きつこうとも。過程が違うのだ。
俺達は出会うべくして出会い、このような関係になったきっと。
「柳生」
そうじゃろ?
煌めく星たちが柳生のためにあるようだと錯覚しそうになる、品行方正な紳士に。
こんな紳士がある意味学校での問題児な俺と付き合っているなんて知れたらどうなるだろうか
バラすなんて勿体ない事などする筈が無いのだが。
「悪戯が過ぎますよ」
と釘を刺される
「俺だけの紳士じゃーとかな」
「別の意味で貴方だけの紳士じゃないですか私」
「勝手に言っとれ!」
と公園の近くでたまに口づけをする事なんて、俺達が知っていればいい。
これが過去になっても二人で隣同士で笑顔で語り合えれば
俺と柳生は似ている、離れることなど出来ない程に、その事を知っているのは俺達とこの星空だけ
今日も星が綺麗だ
END
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