【食】:食事は、栄養をとるために毎日習慣的に何かを食べる事。また転じて、その時食べるものを指す事

大辞林より


食べ物には好き嫌いやベジタリアンなど世界には色々な人がいるし勿論口にするものも多種多様にある。
食材を極める人や食べられればいいと言う人が世界にはたくさんいるが、目の前の彼はおそらく異食症に分類されるだろう、今彼はそこに咲いている花をちぎりながら持っているペットボトルの水で土が付いている部分を洗ってから口に放り込み咀嚼を開始し、その間も手は動かし自分が食べたいと思った花をちぎり小さな籠にどんどん集めて行く、部活をするその身体に異変が起きたのは関東大会辺りだっただろうか
「仁王君、そろそろ摘むのをやめないと花が無くなってしまいますよ ホラ 幸村君に怒こられてしまいます」
「柳生は花を食べる俺は嫌いなん?」
何を言っているのかわからない、彼はいつだって私の想定している言葉を上回った反応をしてくる、花を食べる俺は嫌い? 仁王君の事を嫌いになるわけがない、でも君のその症状は「異食症」であってきっと治さないといけないものだろうから止めてほしい。
ただそれだけなのです。
「食用花でない花を主として食べて、他の食べ物をとらないと言う事は健康的に良くない事ですよ仁王君、私は貴方の体が心配なのですよだから」
食べるのをやめてください――
『異食症』そう、食べ物を一切食べずに、ただ花を無心になって食べるそれが仁王君の異色症だ。世界には色々な事例がある、土、ゴム、スポンジそれだけしか食べない、食べられない人たち
「ほぉか、からだな 別になんもなっとらんに 部活も出とる、成績も出しとる、不健康じゃったらそこまで出来んだろうて」
籠に溜まった花を口に放り込みむしゃむしゃと食べる仁王君の表情は読み取れない


「あぁ、また摘んだんだね 仁王まったく柳生お前も居るなら注意してくれなきゃその花壇の花を俺が見る前に全部食べられちゃうじゃないか」
「幸村君」
きっと彼の事でしょうから会話は全部聞いていたのでしょうね、そしてこの空間に入りこんだ、今はそれがありがたいのですが
「仁王、今回の花の味はどうだい?前より手入れを細かくして日に当たる場所に植え変えたんだけど?」
「まぁまぁじゃな」
「うわぁ、手厳しい それにしてもいつもよりかは食べているって事はおいしく出来た感じかな?」
「味わからんし」
「だとしてもだよ、仁王」
会話から分かる通り幸村君は仁王君が異食である事を肯定し、その食べる花をどうやったら美味しくなるのかという観点から話をしている、つまり異食する彼を肯定する側で私とは「正反対」の位置に居る。
「ほら仁王お前は何をやらかしたんだい?生活指導の勝田先生が呼んでいたぞ」
幸村君に言われては行動しない訳にもいかないのか、のそりとその場から立ち上がり籠を幸村君に渡すと構内へ入って行った
「……今の嘘ですよね」
「やっぱりわかる?なぁ柳生、そこまで食べる事を否定するなよ、重荷になる」
「それは仁王君の事を思ってですよ、いずれあの食では何かしらのマイナスな事が起きてしまう」
「お前って本当頑固だね」
カラフルな色がある中で白色の花だけ摘みとられた花壇をみて思う、私は仁王君の理解者にはなれないのだ。

「理解しなくとも、肯定してあげればいいのに」

それはきっと君の役目なのですよ、幸村君




ただ食べなくては――
そう本能が言った気がした、それを言ってもオカシイ奴の言動に捉えられるだろうけど
食には元来執着も無く、あれば食べるし、無ければそのままなにも食べないという事が続いて数日を飲み物だけで過して、その間にも俺の腹は減ることもなく近所の公園を通りかかった時それは視界に入った。
景観を彩る為に植えられた花だろう、その景色を目に焼き付けた時「食べなくては」と衝動的に思い無心に花を摘んで口に運ぶ、味なんてわからない けれど探していた物を見つけた気がしたのだ。食べる為の、俺の食事を。
それからしてすぐに「花を食べるようになった」そう言った時に幸村はそうかと笑って「じゃぁ美味しく食べられるような花を育ててあげる」と花を食べる事に言及も否定もせず土いじりを再開した。
ペアである柳生に同じように言えば「病院に行きましょう」と勧められた多分『普通の世間』の反応はきっとこちらなのだろう、柳生は何もおかしくない普通の事を言った と自分で思っている筈だ。
柳生は事あるごとに治しましょうねと俺に言う、ちゃんと俺は(花だけども)食べているのに?

「幸村、おんしさっき俺に嘘ついたじゃろ」
「またまたぁ、嘘とわかって行っただろ」
「なんじゃぁお見通しってか」

「柳生の事かい?」
神の子との会話は楽で、怖い。
底がわからない相手とのやりとりは楽しくもあり自分をひけらかすかもしれない場所
でもそれが、神の子になる為の課題だとしたらそれは自分へのプラスになる筈だと仁王は少なからず信じている。

「柳生はおまんの様に俺を肯定出来んよ」
柳生と幸村は違う、幸村が肯定できたからといって、柳生が俺の為だと思っても肯定出来ないそれは確信
「肯定された方が楽だって言ってやらないのかい」
そうすれば俺への治しましょうねという言葉は無くなるだろうが柳生の気持ちはどこに消える?
「馬鹿だねぇ詐欺師なのにお人よし」
「コート上だけやけぇ」
きっと俺の事が心配で離れられないだろうから
「そうやって縛り付けるのかい」
「……どこまで知っちゅう?」
「共依存だからね、お前らはその答えに行きつくのは容易いさ」
『容易い』のぅ かたや詐欺師と言われ、もう片方は紳士とされている奴の考えを容易いとは参謀にも勝るその洞察眼っちゅーんか、流石立海の頂点に立つ男と言うべきか

「お前はクレオメだね」
「クレオメ?」
「そうクレオメ、柳生が仁王を心配してる事を申し訳なく思ってるけれど、それが心地よいって感じだなって思ってクレオメ」
「何言うとんの?」


「ん?ただの花言葉さ」


(お前が今食べている花だよ)

END




クレオメ花言葉(おもったより悪くない)
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